どうも、なべです!
私はYouTubeやInstagramで、味噌汁にもチャーハンにも味の素をよく使います。そのたびにコメント欄には「味の素は体に悪い」「毒と同じ」「プロなら使わないで」という声が届きます。
気になる気持ちは、よく分かります。そこで今回は、味の素がいつ・どうやって生まれたのか、なぜ「悪者」と言われるようになったのか、そして今はどうやって作られているのかを、味の素社の社史や、日本・アメリカ・ヨーロッパの公的機関の資料を読んで1つにまとめました。出典は記事の最後に全部のせています。
※この記事は味の素社の依頼で書いたものではありません(PRではありません)。体調や病気のことで心配がある方は、お医者さんに相談してください。
30秒でわかるまとめ
- 1.味の素の正体は、昆布のうま味と同じグルタミン酸。1908年に日本で発見され、1909年に発売されました。
- 2.今はサトウキビの糖蜜などを、味噌や醤油と同じ発酵でグルタミン酸にして作っています。
- 3.「体に悪い」というイメージは、昔の呼び名「化学調味料」と、公害が問題になった1960〜70年代のうわさや実験の報道から広まりました。
- 4.日本・アメリカの安全機関は、ふつうに使う量なら安全という立場です(ヨーロッパは1日の上限の目安を決めています)。水も塩も砂糖も同じで、大事なのは適量です。
- 5.使う・使わないは自由。私は、これからも使い続けます。
味の素の正体は「昆布のうま味」

始まりは明治時代です。東京帝国大学の池田菊苗(いけだ きくなえ)博士は、昆布だしのおいしさの正体を調べ、1908年、それがグルタミン酸というアミノ酸だと突き止めました。そして、この味を「うま味」と名づけます。
同じ1908年に池田博士は特許をとり、事業を任された鈴木三郎助さんが、翌1909年5月20日に「味の素」として売り出しました。池田博士は、特許庁が選んだ「日本の十大発明家」の1人でもあります。
ここで大事なのは、グルタミン酸は特別な薬品ではないということ。昆布、トマト、チーズ、醤油、味噌、そして母乳にも入っている、うま味の成分です(あとで数字で紹介します)。
作り方は3回変わった。「石油から作っていた」は本当?
「味の素は石油から作られている」という話を聞いたことがある方もいると思います。実はこれ、昔は半分本当でした。味の素社の社史をもとに、作り方の移り変わりを並べるとこうなります。
1909〜1965年
抽出法
小麦粉や大豆のたんぱく質を塩酸で分解して、グルタミン酸を取り出す
1956年
発酵法の登場
協和発酵(当時の社名)が、微生物の力で糖からグルタミン酸を作る方法を発表
1962年〜
発酵法
味の素社も工場で発酵法の生産を開始(九州工場)
1962年12月〜1973年5月
合成法(約10年でやめた)
四日市の工場で、一部を石油化学の原料(アクリロニトリル)から合成。1973年に中止し、それ以来一度も使っていない
今
発酵法
サトウキビの糖蜜などを原料に、味噌や醤油と同じ発酵法で作る
出典:味の素社「味の素グループの100年史」第6章・第7章
つまり、1962年12月から1973年5月までの約10年半、味の素社は一部の製品を石油化学の原料から作っていました。でも、やめたのは50年以上前です。
社史には、やめた理由もはっきり書かれています。会社としては合成法に自信を持っていたけれど、わずか10年ほどの間に、化学が「最先端の技術」から「公害の元凶」と見られる時代に変わり、食べ物を化学合成で作ること自体が受け入れられなくなった、と。ここが、あとで出てくる「悪者」の話にもつながっていきます。
今の作り方:サトウキビ → 発酵 → 結晶

- サトウキビ:しぼった糖蜜が原料(キャッサバやトウモロコシのでんぷんを使うこともある)
- 発酵:発酵菌が、糖からグルタミン酸を作る。味噌・醤油・お酒と同じ「発酵法」
- 結晶:使いやすいように、グルタミン酸ナトリウムとして結晶にする
- 仕上げ:かつお節のうま味(イノシン酸)としいたけのうま味(グアニル酸)を少しだけ足す
味の素社によると、今の「味の素」の中身は、グルタミン酸ナトリウムが97.5%、イノシン酸とグアニル酸が1.25%ずつです。
なぜ「悪者」にされたのか?3つの理由

理由1「化学調味料」という呼び名
昭和30年代、NHKの料理番組では商品名の「味の素」を言えませんでした。そこで代わりに使われた一般名が「化学調味料」です。当時の「化学」は、最先端でかっこいい言葉でした。ところがその後、化学のイメージが一変し、名前だけが「体に悪そう」な響きになってしまいます。今は「うま味調味料」と呼ばれています(1980年代後半から)。
理由2公害と添加物の不安が高まった時代
1968年は水俣病の原因が国に認められ、米ぬか油にPCBが混ざったカネミ油症事件が起きた年。1969年には、人工甘味料チクロが「がんの疑い」で使用禁止になりました。「化学」「添加物」への不安が一気に高まったのが、ちょうどこの頃です。同じ1968年、アメリカでは「中華料理を食べたあとに頭痛や顔のほてりが出る」という「中華料理店症候群」が話題になり、原因としてグルタミン酸ナトリウムが疑われました。きっかけは、医学雑誌に載った1通の短い投書でした。
理由3マウスに大量に注射した実験の報道
1969年、生まれたばかりのマウスに、体重1kgあたり0.5〜4gのグルタミン酸ナトリウムを皮下に注射すると脳に傷ができた、という実験が科学雑誌Scienceに載り、日本の新聞でも大きく報じられました。ただし、これは口から食べたのではなく注射です。量も、体重60kgの大人に置きかえると30〜240gにもなります。料理で使う量とは、けたが違います。
呼び名、時代の空気、そしてセンセーショナルな報道。この3つが重なって、「化学調味料=体に悪い」というイメージが広まっていきました。
その後、世界の専門家はどう判断した?
騒ぎのあと、日本・アメリカ・ヨーロッパ・国連の機関が、何度も安全性を調べ直しています。
| 1958年 | アメリカ FDA 「一般に安全と認められる物質(GRAS)」に認定 |
| 1970年 | 国連 JECFA 1日の許容摂取量を「体重1kgあたり120mg」と勧告(1歳未満の赤ちゃんを除く) |
| 1987年 | 国連 JECFA 見直しの結果、「1日の許容摂取量を特定しない」(=ふつうの食事で上限を決める必要はない) |
| 1995年 | アメリカ FDA 専門機関(FASEB)の報告を受けて、安全性をあらためて確認 |
| 2017年 | ヨーロッパ EFSA グルタミン酸類の1日の許容摂取量を「体重1kgあたり30mg」と決める |
出典:味の素社「味の素グループの100年史」第7章/味の素社「味の素®の原材料は何?製法は?安全なの?」/FDA/EFSA
「中華料理店症候群」についても、その後たくさんの試験が行われました。「自分は味の素で具合が悪くなる」という人に、本物とニセモノのどちらか分からないようにして飲んでもらう試験では、症状がはっきり再現されなかったり、結果がそろわなかったりしています。アメリカFDAも「報告は受けたが、原因だと確かめることはできなかった」としています。
都合の悪いことも、ちゃんと書いておきます
公平にするため、気をつけたほうがいい話も書いておきます。
- 料理に混ぜずに、空腹のときに5gほどを一度にとると、頭痛を訴える人が少し増えたという試験があります(ただし結果はそろっていません)。
- ヨーロッパのEFSAは2017年、1日の上限の目安を体重1kgあたり30mg(体重60kgなら1.8g)と決めました。これは食べ物に加えたグルタミン酸類をすべて合わせた量で、加工食品をたくさん食べる人や子どもは超えることがある、と注意しています。
でも、ここで私がいちばん伝えたいのは、どんなものでも、適量を間違えれば毒になるということです。
どんなものにも「適量」がある
水も塩も砂糖も、どんな調味料・食材にも「適量」という考え方があります。味の素だけが特別に危ないわけではありません。
ひとふり〜少し使うのと、何gもまとめてとるのは別の話です。料理でも、入れすぎるとかえっておいしくなくなります。私のレシピでは、3〜4人前の味噌汁に小さじ1を目安にしています。
実は、毎日のように食べている

グルタミン酸は、ふだんの食べ物にたっぷり入っています。100gあたりの量(mg)を並べるとこうなります。
グルタミン酸の量(100gあたり・mg)
出典:NPO法人うま味インフォメーションセンター「食材別うま味情報」。食材の個体差や季節で幅があります。
さらに、母乳にもグルタミン酸が多く含まれていて、昆布だしに匹敵するほどです。私たちは、生まれたときからうま味を口にしているんですね。
もうひとつ。食品の原材料に書かれている「調味料(アミノ酸等)」は、グルタミン酸ナトリウムなどのことです。顆粒だし、コンソメ、めんつゆ、スナック菓子など、多くの加工食品や外食で使われています。体の中では、昆布のグルタミン酸も味の素のグルタミン酸も同じように分解されて使われ、体にたまることはありません。
減塩の味方にもなる
意外と知られていないのが、塩分の話です。うま味調味料に含まれるナトリウムは、同じ重さの食塩の約3分の1。しかも、うま味を効かせると、塩を減らしても物足りなさが出にくくなります。
同じ1gに含まれるナトリウム
出典:日本うま味調味料協会「うま味調味料ってなんだろう?」(食塩はナトリウム約39%で計算)
私の結論:使う・使わないは自由。私は使い続けます
昆布やかつお節で出汁をとるのは、本当に素晴らしいことです。時間のある日には、ぜひやってみてください。でも、仕事や子育てで忙しい毎日に、毎回出汁をとるのは大変です。
味の素は、昆布だしのうま味を、すぐ使える形にしたもの。サトウキビから発酵で作られていて、世界中の安全機関が調べてきた調味料です。私はこれからも、胸を張って使い続けます。
もちろん、気になる方は使わなくて大丈夫です。顆粒だしや、昆布・かつお節でもおいしく作れます。大事なのは、うわさではなく、事実を知った上で自分で選ぶことだと私は思います。
なべ味の素を使った味噌汁のレシピは、このあとのリンクから見られます。だまされたと思って一度作ってみてください!
味の素を使う、なべの味噌汁
もっと知りたい人へ:おすすめの本
リュウジ 著/河出新書(2023年)
料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?
味の素のことをもっと知りたい方には、料理研究家のリュウジさんのこの本がおすすめです。私も参考に読んだことがあるのですが、とても面白かったです。なぜ料理研究家が味の素を使うのか、使い方から安全性の話まで、料理を作る人の目線で書かれています。
Amazonで見る※Amazonのアソシエイトとして、なべのだいどころ。は適格販売により収入を得ています。
参考にした資料
- 国立公文書館「公文書にみる発明のチカラ 49. グルタミン酸の発見(池田菊苗)」
- 特許庁「日本の十大発明家」(1985年選定・池田菊苗「グルタミン酸ソーダ」特許第14805号)
- 味の素社「味の素グループの100年史」第6章(新製法への転換)
- 味の素社「味の素グループの100年史」第7章(安全性問題への対応)
- 味の素社「味の素グループの100年史」第7章(東海工場のMSG合成法の中止)
- 味の素社「味の素®の原材料は何?製法は?安全なの?」
- 味の素社 お客様相談センター「「味の素®」「うま味だし・ハイミー®」の原料と製造方法」
- 味の素社「「味の素®」Q&A」
- 日本うま味調味料協会「うま味調味料ってなんだろう?」
- うま味インフォメーションセンター「食材別うま味情報」
- うま味インフォメーションセンター「食物とうま味物質」
- U.S. FDA「Questions and Answers on Monosodium glutamate (MSG)」
- EFSA「EFSA reviews safety of glutamates added to food」(2017年)
- Olney JW「Brain lesions, obesity, and other disturbances in mice treated with monosodium glutamate」Science 1969
- Obayashi Y, Nagamura Y「Does monosodium glutamate really cause headache?: a systematic review of human studies」J Headache Pain 2016
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